一つ喩え話をしましょう。
あなたはある護身術教室を開いている講師とします。
ある日、初老の女性が教室にやってきました。
「最近ぶっそうになってきたから自分の身くらい自分で守れるようにならなくちゃね」
約1時間くらいの授業を受けて女性は岐路に着きました。
帰りの地下鉄のホームで悲劇が起こります。
精神的に病んだ若い女が刺身包丁をバッグから取り出し振り回し始めたのです。
さて女性はどうなるのでしょうか?
これはあくまで喩え話でフィクションです。
そして以下は現実に起きた事件です。
『2010年9月5日、名古屋市の地下鉄金山駅で23歳の女が81歳の女性を包丁で何度も刺して死亡させた。
80数箇所も刺したという。逮捕後「わたしに名前はない。死んだ」と意味不明のことを話し、
統合失調症で精神科への通院歴があるという。
精神鑑定を実施し、刑事責任を問えるか判断するとしている』
http://ameblo.jp/socworry/entry-10641723217.html
この現実に存在する「包丁を持った女」は武術の達人でもなければ格闘家でもないし当然軍人でもありません。
しかし私たちが最も遭遇する確率の高い「護身術を使用する状況」は、この事件のようなものではないでしょうか?
モラルも道徳も、個人の努力だとか精神性だとかも除外して「護身術を習いに来た未経験者」が救われるにはどうすれば良いのでしょうか?
この女性は諦めるしかないのでしょうか?
この女性は練習不足だと批難されるのでしょうか?
この女性が助からないのなら何の為の護身術教室でしょうか?
私は、最も弱い人が自身の力で迫り来る「死」に立ち向かえないなら武術の意義は無いと断言します。
当会のテーマはまさしくここにあります。